あとがき
『Affection for...』の原型ができたのは、四年ほど前になりま
す。
今、この物語と対になっている小説『Love Spreads』の初期設定
のノートを繰ってみると、武史・亜矢、寛史・美佳の四人が入り乱
れる、恋のさやあてに近い構想が目に入ってきます。
エンディングも追憶調で、誰も「対」になることはなく、どちら
かと言えば、苦いイメージが残る物語が予定されていたようです。
しかし、結局、『Love Spreads』は武史と亜矢の二視点で恋と官
能と青春の挫折を追う、とてもストレートなお話になりました。目
的の一つである、官能の深まりの追求と、主人公二人の性格を考え
ると、自然な流れだったと思います。しかし、もう少し現実に寄せ
た、割り切れなさを残す苦い想いが、置き去りになってしまいまし
た。
恋情とは言い切れず、しかし、性別が異なるからこそ抱く、友情
ともまた異なる共感を基調にしたお話も、描きたかった物語の一つ
です。
そんなわけで、もう一組の主人公、寛史と美佳を描く物語を、前
作の終了を受けてオンライン連載に踏み切る事にしたのです。
それ以来、三年余り。ようやく完結にこぎつけることができまし
た。
『Love Spreads』は人気のあるお話でしたし、期待してくださっ
た方々には、本当に申し訳のないことをしたなぁ、と反省もしてい
ます。
ただ、作者としては、どういう形であれここまで持ってこれた事
に、大きな満足を抱いているのです。
これで、この二作と登場人物を共有する『恋のStep-Up Lesson』
も含め、一つの世界にけじめをつけることもできたわけですから…。
もし、このお話を初めてお読みになって、武史や亜矢、真雪たち
のことが気にかかるようでしたら、それぞれの作品のページを訪れ
てみて下さい。
作者としては、今では筆の至らない部分も目につき、少し恥かし
い部分もあるのですが、書いている時には目一杯頑張って仕上げた
ものです。「らぶえっち」な恋愛気分を楽しんでいただけるお話に
はなっていると思います。
最後にひとつ、前作に比べ官能描写が少なくなってしまいました
が、なにとぞお許しください。
当初は非十八禁作として公開していましたし、この二人について
は、これくらいの描写が適当だと考えて選択したものです。
特に終盤部分は、あまり具体的に書くと、作品の色合いを歪める
怖れがあるかな、と思い巡らし、ああした形で過ぎた年月を振り返
る内容にしました。
今度は、全く新しい設定で、正調恋愛小説を書こうと思っていま
す。いくつか構想はあるのですが、今はどれから手をつけるか決め
ていません。来年ぐらいにはお目にかけたいと思っていますので、
この色彩のものがお好みでしたら、お待ちいただけると幸いです。
(2005.6)
(2005年5月発行の同人誌のあとがきに、加筆・修正を加えたものです)
この四月に書き下ろした後日短編、『Love Sprituality』を新た
に終章として加え、全八章の話として再構築させていただきました。
実は去年、同人誌としてこの話をまとめた時、この『Love
Sprituality』に当たる部分を二視点で構築しようとして失敗、結
局蛇足なエッチ番外になる気がして、放棄することにしたのでした。
今年になって改めて思い直し、寛史視点の後日談として書いてみ
たところ、思いの外しっくりきて、美佳の想いも織り交ぜる話にで
きましたので、改めて本編に入れることにしました。
終章の題名からわかるとおり、これで『Love Spreads』のシリー
ズは完全に終了です。
サイトを始めてから長い付き合いになりましたが、切ない「らぶ
えっち」なロマンスとして、拙いながらも書き終えられたことに、
作者は決して少なくない満足をおぼえています。
『Love Spreads』『恋のStep-up Lesson』を合わせて、おそらくわ
たしのサイトで最も読んでいただいた話、励ましの言葉や感想を頂
いた方には、今も感謝しています。
本当にありがとうございました。
(2006.7)