あとがき

 楽しい時を過ごさせてもらったなぁ。
 この話を書き終えて半月あまり、思い返して自然に浮かんでくる
のは、そんな感慨です。

 物語の創作という、自らの夢想を追う作業が、読んでいただいた
方の夢にわずかでも重なったのか、それはわたしにはわかりません。
 でも、みのりと佳澄の想いの行方を追っている時はいつも、恋の
煌きも官能の熱さも、今を生きていく温もりも痛みも、最後には整
った環を描くような気持ちで取り組んできました。
 こんな世界に住んでみたいかも――作者自身、何度かそう感じた
のは、きっと少しは夢を形にできた、ということなのでしょう。ま
とまった「作品」としては歪なところもたくさんある小説ですが、
その時々の気分も交えながら、「連載」という形で書いていくのも
一つのあり様だな、と思うのです。
 第二部のあとがきで書いたように、つらつらと日常を書き綴る事
も考えました。三部の執筆に入ってからは、「旅立つ想い」構想時
に組み立てた終盤への展開との綱引きだったのですが……結局、完
結の二文字を打たせてもらうことにしました。
 この世界は、楽しい夢の一つではあったのですが、いつまでもこ
こにいるわけにもいかないのでしょう。
 新しい構想の影が浮かぶ薄い幕の向こうから、早く来いよ、と呼
びかける声が聞こえ始めています。

 ネット上、オフラインの同人活動でも、たくさんの出会いをくれ
たお話でした。
 連載中、他の同人作家の方々と百合系同人誌を出せたのも良い思
い出ですし、通販も含めてもっとも多くの方にお買い上げいただい
た本になりました。それまでの執筆傾向では考えられなかった方面
への広がりが、創作の大きな力になったことは間違いありません。

 このタイプのお話を再び手掛けるのか、今は答えがでません。ラ
フな思いつきとしては、異性婚後に、そうか、と気がつき恋を求め
て……、という感じの、性の自己自認を絡めたお話などもあるので
すが……わたしが物語として紡ぐ必要があるのか、はっきりしない
ところです。
 百合系としては現連載の「GET!」がありますが、あれはどち
らかと言うと別の部分を多く使って書いている、萌え/娯楽色が強
い話ですから……、きっと結局、何かの形で「現実系」のものも書
いていくことになると思います。

 ともあれ、長きに渡ったみのりと佳澄の物語も、これにて幕です。
連載開始から約三年、リアルタイムに追ってこられた方は大変だっ
たかもしれませんが、諦めずお付き合いいただいたことに、感謝申
しあげます。
 また、新たにお読みになられた方は、全体を通じての揺らぎにご
不満を抱かれるかもしれませんが、長きに渡るオンライン連載の結
果と言う事でご寛恕ください。
 それでは、重ねて御礼申し上げます。この長いお話をお読みいた
だき、本当にありがとうございました。
 そして、できましたら別のお話で、またお会いしましょう。
(2004.9.2)

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