ちなみちゃんの弟

 はにゃぁ〜、いいお風呂だったぁ。
 ラベンダーもなかなか。
 身体中がポカポカで気持ちいい……。
 うん、お肌もピカピカ。
 ばら色ほっぺで、健康優良児だぞだぞ〜。
 
 またちょっとオッパイ大きくなったかなぁ。
 うん、イッパイ陸くんにモミモミしてもらったから。
 ギュッ。
 ふふ、谷間谷間。

 オンナの子は、アイしてるオトコの子に可愛がってもらうと、綺麗になるノダ。
 そだそだ、明日着てくの、選ばなきゃ。
 なんたって、今年の初デートなんだにゃ。

 ど・れ・に・し・よ・うかな〜。

 ホワイトにブルーの花柄……。ちょっと愛らしいのもいいにゃぁ。
 ブラックにスパンコール入り。ワンピの下に着てったら、ミスマッチで燃え燃え〜なんて。
 Tバックのヒョウ柄もワイルド〜。
 ピンクのベビードールとか。レース入りのガーターとか……。でもでも、陸くん、めんどくさがりだからにゃぁ。
 ちょっとづつ脱がされちゃうの、好きなんだけど。

 にゃ、ちょっと想像しちゃった。
 
 へへへへ。

 ……バタン。

 ぬ? なんだろ。あらら、階段下りて玄関出てっちゃった。
 ガチャガチャいってるの、車庫のマウンテンバイクだよね。
 あ、走ってく音。
 なんだろ、潤くん。今ごろ。

 えっと、さすがにハダカはだめだよねぇ。
 ママにも怒られるし。
  
  
  
 とと、ドアが開いてる。
 あ、やっぱいない〜。
 机の電気もつけっぱなしだし、潤くんらしくないぞ。
 ああっ、コンピューターもじゃない。

 もう、最近潤くん、らしくないんだよね。
 高校入ってからなんか暗いし、ゼンゼン話してくれないし、すぐ怒るし。
 ちょびっと前まで、ねえちゃん、てペタペタしてくれたのに〜。

 ちなはなぁ〜。弟にいつまでもベタベタされてもしょうがないだろ? 男はイッペンに大人になるんだよ。
 そりゃ、陸くんの言う事もわかるけど。
 お姉さんの寂しさは、お姉さんな人にしかわからないよ。うん。

 しょうがないから、電気消しとしてあげよ。

 ええっと、バッテンをクリックだったよね。
 作成中のメール文書が……って、はい・いいえ? はい、でいいのかな。

 はれ、別のウィンドウにいっぱい文字が並んでる。
 
 >どうしたの?
 >母と喧嘩しちゃった。会いたいな、潤くん
 >俺、今出られるよ。姉貴しか家にいないし
 >本当に? でも、夜遅いから
 >そうか。そうだよね
 >うん
 >だよね
 >でも(ふう・・・)
 >うん・・・
 >なんか、疲れちゃった、私。ほんとの私は誰も見てくれないし。いい子以外の私に、誰も価値は見出さないから
 >そんなこと、ないよ。しのぶさんは頑張ってるじゃない
 >その言葉、嫌いだな
 >あ、ごめん
 >謝らなくていいよ。やっぱり、会いたいな、潤くんに。だって、潤くんみたいな人、この学校にはいないから。私のこと、そうやって真っ直ぐにみてくれる人

 しのぶって……。
 ああ、わかった。中学で潤くんの同級生だった。
 スゴクできる子だったっけ。
 それに、美人さん。どっかの付属に行ったってママが言ってた。

 そっか〜。
 潤くんらしいなぁ。
 うんうん、わたしの自慢の弟だもんね。
 しのぶちゃんとお似合い、お似合い。

 そっか〜。

 みんな大人になるんだにゃ。
 ちょびっと寂しいけど。
 ごめんにゃ、潤くん。秘密のチャット、盗み読みしちゃったお姉ちゃん、許してね。
 
 
 
 潤くん、今日は帰ってこないかも。
 ママにはわたしがうまくごまかしとこ。
 これも、優しいお姉さんのお勤めなんだにゃ。うんうん。
 ふあぁ、もう寝よう……。
 
 
 
 
 いいの?
 大丈夫。
 
 
 だって、お姉さんが。
 大丈夫、一度寝たら起きないから。
 うん。ここ? 潤くんの部屋?
 
  
 ううん……、なんか声がする。
 眠いよ〜。
 
 壁の向こうからちっちゃな声。
 ううん……。
 眠いんだにゃ。アッタカイの、大好きなのに……。

 あれ。
 あれ。

 オンナの子の声に聞こえる。どうしてこんなとこで……。

 あ。
 もしかして。

 ヒソヒソ声が聞こえる。壁に顔を近づけると……。あ、やっぱり。オンナの子の声だ。
 もう、潤くん。やるじゃない。そういうことはすっごく奥手だと思ってたのに。
 カシコクて、オンナの子のハートもゲッチュ。やっぱり、潤くんはできる弟なのだ。

 ………。
 ………。

 ………。
 ………。
 
 
 はにゃにゃ。眠れなくなっちゃった。
 やっぱ、気になるぅ。
 LOVELOVEなんだろうな〜。あんなことや、こ〜んなことしちゃったり。
 ああん、勝手に想像しちゃう。

 え? でもでも、聞こえてくる声が。
 ……言ったって。
 俺だって……、……から。
 しょうがないもの。私、一人じゃ……。
 押さえつけたみたいな感じ。これって、違うよ。どうしたんだろ。

 しのぶさんの、……てること、わかるけど、俺が……、できないよ。
 ううん。そうだよね。……でも、しょうがないから。
 ダメ。そんな暗い声、オンナの子に出させるのは。潤くん、何の覚悟もなしで、オトコの子の家に来る子はいないよ。

 でも、耳をくっつけた壁の向こうの声。
 ……送るよ。
 うん、ありがとう。でも、大丈夫。タクシー呼んで帰るから……。

 ダメ!
 
  
  
 ね、姉ちゃん。
 廊下で立ちんぼになってる黒いポロシャツの潤くん。その後ろに立ってる、グリーンのトレーナーの子。
 なにしてるの。ダメダメ、部屋に戻る! あ、こんばんわ、しのぶちゃん。
 あ、こ、こんばんは、ちなみさん。
 ペコリと下がったショートのちっちゃな頭。そう、しのぶちゃんだ。可愛くって、でも、勉強もすっごくできるって、西中の三年生もみんな知ってたっけ。
 ほら、戻るの、潤くん!
 う、なんだよ、押すなって。

 ギュ!
 思いっきりつねっちゃうんだ。
 ほら!
 わ、わかったよ。
 
 
 
 
 そっか、それじゃあ、ちょっとしんみりしちゃうよね。
 しのぶちゃん、引っ越さなきゃいけないんだ。
 
 潤くんはベッドの上。しのぶちゃんはカーペットの上に腰を下ろしたままで黙っちゃってる。
 うぅ、気まずいよ〜。でも、このままじゃ良くないんだ。さっきのチャット、それに、下を向いたままのしのぶちゃんの切ない顔。

 わかるんだ。こういう時のオンナの子の気持ち。待ってるんだよ〜、潤くん。ギュ、して欲しいんだ。ゼッタイ。
 ゼッタイなんだから。

 あの……。
 なあに?
 お手洗い……、借りられる?
 動かない潤くん。ぼんやりしてカーテンの隙間を見てる。もう!
 あ、下だから。ついてきて。
 
 
 ジャー……。
 バタン。
 扉が開いた後、立ったまま動かないしのぶちゃん。

 私、もう帰ります。潤くん、迷惑みたいだから。ちなみさんから、言っておいて。
 え、ダメだよ。しのぶちゃん。だって……。
 いいの。迎えに来てくれただけで満足だから。
 ダメだよ、だって、潤くんのこと好きなんでしょ、しのぶちゃん。
 
  
  
 コク。

 だよね。だったら……。
 でも、私、潤くんが思ってくれてるような女じゃないから。そんな綺麗な子じゃないから。
 え?
 すごく済まなそうな目。すぐに俯いて、玄関の方に歩こうとして。

 ダメ! 辛いのはよくないよ。しのぶちゃん。

 しのぶちゃん、待って。言いたいことがあるなら言った方がいいよ。ほら、知ってるでしょ。西中の時、二年生も言ってたでしょ。ナンでもありのちなちゃん〜、って。
 頭半分高い肩に手をかけたら、しのぶちゃん、唇を噛んだ。
 
  
 
 ……潤くん、すごく理想が高いから。
 え?
 簡単に抱き締めたりしないんだって。愛が育つのは、身体じゃないからって。
 
 え、どうして……?
 しのぶちゃんが、わたしを済まなそうに見つめた。
 
 私、そんなに綺麗じゃないから。ホントは、前に付き合ってた人もいるし。潤くんには言ってないけど……。
 もう一度、上目遣いに見つめてくる、大きな瞳。
 わたし、潤くんに抱き締めてもらう価値なんてない。でも、迎えに来てくれた時は嬉しかったから。それでいいから。
 ……あ、そうか。そうなんだ。
 潤くん、ちょっと前に言ってた。なんであんなこと大声で言うのかって思ったけど。

 女なんて、みんな姉ちゃんみたいなのかよ! 違うだろ!

 もう、馬鹿。
 ちょっとカッコ良くなったかなぁ、って思ったのに。
 オンナの子を寂しくしちゃダメだよ。もう。
 ムズカシイ事、考え過ぎなんだ。しのぶちゃん、こんなにギュッして欲しいだけなんだもの。ハートがイッパイ飛んでたの、見えなかったのかなぁ。

 ごめんね、しのぶちゃん。
 ち、ちなみさん。
 いいの、しのぶちゃん。イケズな弟の代わりに、ギュッてしてあげるぅ。
 で、でも……。

 チュッ!

 無理しちゃダメ。隠さなくたっていいのに……。

 あ、とってもいい香りだにゃ。お風呂と、花の匂い。もう。ちゃんと準備してきてるんじゃない、しのぶちゃん。
 耳元で囁いちゃう。
 わたしも気持ち良くなるから。しのぶちゃんも一緒に、しよ。

 舌がクチュってした。あ、やっぱり、ドキドキしてる。
 玄関マットの上に押し倒しちゃう。
 うん、可愛いにゃ、しのぶちゃん。

 だ、ダメ……。
 ううん、そんなことないよ。あ、もう、こんなになってる。抱いて欲しかったんだよね、しのぶちゃん。わたしがイッパイ気持ちよくしてあげるから。

 トレーナーをたくし上げたら、可愛いレースのブラ。
 乳首をコロコロしちゃうね。
 チュッ、チュッ!
 うん、もっと声出していいよ。いっぱい揉んであげちゃうから。
 おへそを、ツツ〜っと。
 
 さわっていい?
 
 コクリ。

 あ、スゴイ洪水。こんなに待ってたんだ。
 可愛い〜。やっぱり、好きな子のそばにいたら、抱き締めて欲しいよね。
 端っこからお指を入れちゃうね……。じっとり、うん、すごくいい感じなんだ、しのぶちゃん。 
 
 姉ちゃん!
 階段の上から声。あ、潤くん。なあにそんなところからのぞき込んでるの。
 薄目を開けて、しのぶちゃんが上を見てる。
 いいのいいの、ほっとこ、鈍感な理屈屋さんは。
 あ、ダメ、ちなみさん。
 ウ・ソ。敏感なとこ、サワサワしちゃうから。
 あ、あ……。
 摘んでこすったら、気持ちいいよね。

 ドンドンドン。
 階段を下りてくる音。
 姉ちゃん、何やってんだよ! やめろよ。
 いいの。しのぶちゃん、さみしいんだから。わたしが気持ちよくさせてあげるんだ。潤くんは部屋にいなさいよ!
 じゅ、潤くん……。
 いいのいいの、しのぶちゃんは。服直さなくてもいいんだよ。
 
 チュ、チュ……。
 う、う……。
 
 うんうん、舌が絡んできたんだにゃ。しのぶちゃん、正直でいい子。イッパイ愛してあげるね。
 脱がしちゃうね。
 あ、ダメ。こんなところで。
 いいの、しのぶちゃん。あ、すっごく綺麗な身体なんだにゃ。エッチなところも舐めてあげる……。うん、そんな恥ずかしがらなくていいよ。

 やめろよ!
 あ、痛! もう、乱暴潤くん。足に、ドンって身体が当たった。
 って、あれ、手に当たったのって……。
 なんちゅう節操なしだよ! しのぶさんは……。

 もう、もう、もう、潤くんもホントはそうだったんだ。うふふ。

 ね、姉ちゃん、な……。
 
 
 スウェット、パッと下ろしたら……うわ、おっきい〜。やっぱりぃ、潤くんも、でしょ?
 でもでも、しばらく見ないうちにすっかり大人なんだにゃ。
 う〜ん。プックリ剥けちゃって。
 あん、ちょっとざわってしちゃった。
 舐め舐めしちゃおうかな〜。そうすれば、潤くんだって……。

 だ、ダメ。ちなみさん。
 しのぶさん……。
 裸のしのぶちゃんが身体を起こしてる。うふふ、そうだよね。これ、しのぶちゃんのだもんね。

 ほら、しのぶちゃん。

 ありゃりゃ、すご〜い。
 あんなに頬ばっちゃって。もう、そんなにぃ。
 あ、しのぶ、さん……。
 クチュ、クチュ……。あん、凄い勢い。もう、刺激強すぎ〜。
 先っぽナメナメ、奥まで飲みこんじゃって。もう、しのぶちゃんもとってもエッチなオンナの子なんだにゃ。

 身体を離した潤くん、ギュってしのぶちゃんを抱き締めて。
 うんうん。そうじゃないとダメなんだにゃ。

 二階に上がってく潤くんの目が、言ってる。
 わかってるよ〜。邪魔者は消えるからね。
 潤くん、イッパイ愛してあげるんだにゃ。
 あ、そだ。
 潤くん、ゴムちゃんと持ってる〜?
 はいはい、そんな目しないで。お姉ちゃんのお節介だったみたい。
 
 
 
 
  
 
 あ、あん。
 しのぶ、しのぶ!
 ダメ、潤くん。またイッちゃう!
 
 
 ああ、ダメだにゃ。眠れない〜。
 
 
 あ、ああ。そんなに。
 愛してる、しのぶ!
 うん、わたしも!
 
 
 ああ〜ん。これじゃあ、寝不足になっちゃう。
 ちょっと、リビングに避難なんだにゃ。
 
 
 もしもし。陸くん?
 お、なんだ、ちな。こんな遅くに。
 へへへ、ちょっと声が聞きたくなっちゃった〜。
 おいおい、明日会うだろ。あ、もう今日か。
 うん、でもでも……。ちょおっと、寂しいかなぁ、なんて。
 そっか。そうだ、今からこっち来るか? どうせ、朝まで時間ないしさ。
 え〜、いいの、陸くん。
 いいのって、いっつものことじゃんか。ちなが寂しい時は、ここにいたい時だろ。
 へへへ。う〜ん、そうだけど……。ちょっと照れくさいな〜。
 何らしくないこと言ってんだよ。おいで、ちな。
 うんうん、いますぐそっちに行くぅ〜。あ、それで……。
 うん?
 ええっと……。
 はいよ、いっぱい抱いてあげるからな。千波美。
 うん!

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