ちなみちゃん危機一髪!

 いい子だったにゃぁ……。
 カワイイし、素直だし。
 ちなさんも、彼氏大事にしてくださいね、だって。
 うう〜ん、照れる〜。
 照れるんだぁ。

 もっとちゃあんと愛してあげれば、だったかにゃ。
 お口でしてあげてる時、ちょっとジンジンしちゃったし。
 でもでも、初めてはちゃんと取っとかないと、ね。

 あの子だったら、……あれれ、ちゃんと名前聞かなかったっけ。うう〜ん、レイくんってだけはわかってるんだけど……、ま、いいかぁ。レイくんだったら、女の子の気持ち、ちゃんとわかるはずだもん。
 だって、いつもあんなカワイイ格好でいるんだもの。
 うん、でも、ホントにいい子だったにゃぁ……。
 いっぱい飲んじゃった。へへへ。

 は、はりゃ。
 今日はちょっとエッチ暴走気味かにゃ。
 夜の人ごみでムフフな妄想じゃ、陸くんだって、呆れちゃうよね。

 え、えっと。
 そうだ。
 わたしが悪かったんだよね。
 あの子が言うとおりだにゃ。一等大事な人だもん。ちなさんの彼なら、すごくカッコイイ人だろうなぁ、だもんね。

 うん、そうなんだ。
 だって、遠征先で、すごく成績が良かったって、ラグビー部の圭くんも。
 百点以上取ったって、スゴイ、んだよね?
 なんたって、満点以上だもん。
 なのに、わたし、ひどかったんだ。
 真っ先にかけてきたはずなのに、あんなこと、言っちゃったし。

 ちならしくないじゃん。

 うん、だよね。カイちゃんの言うとおり。
 どうしちゃったのかな……。風邪治ってから、ちょっと変。ううん、寝てた時から、なのかな。

 うん。

 陸くんにムギュ、してあげなきゃ。
 いっぱい、チュ。しよ。
 で、ギュッて抱き合って。
 好きだよ、陸くん。
 わたし、ゼッタイ陸くんだけだもん。
 それで、いっぱい触ってもらって、お返しもいっぱい。あそこも、ここも、サワサワ、なめなめ……。

 はにゃにゃ。また、ホワホワ〜。
 ううみゅ。
 もう、11時だぁ。
 人の色が変わってきたもん。
 ほらほら、歌うたいな集まりさん。
 盛り上がりな学生のお兄さん達。
 千鳥足、な背広のオジサン達。

 プチ。

 あ、ママ。
 どうしたの、千波美。遅いじゃない。
 ご、ゴメ〜。ついつい遊んじゃって。
 今どこ?
 池袋だよ。も、帰るから。ママ、今日は夜番?
 そうよ。遅いし、気をつけてね。
 うん。今から電車乗るから。
 夕食の残り、テーブルの上に乗せとくからね。
 ありがと、ママ。チンして食べるね。
 あ、待って。
 え?
 気をつけてね、千波美。春先、でしょ。
 あ〜、だいじょぶ、ダイジョ〜ヴイって、古いかぁ。ちゃんと目覚ましてくからぁ。
 そう? じゃ、もう仕事行くから。
 
 
 
 ホームから出てく鈍行。
 やっぱり土曜日。
 スゴイ人の数だなぁ。
 あ、きたきた、急行。
 うあ、ぎゅうぎゅうだ。

 あみゅ。イタタ。そんなに押さない、押さない。

 あらら。
 人の背中ばっかり。
 最近、夜の電車って乗ってなかったなぁ。こんなに混んでたっけ。

 結構あっついかも。ちょっと趣向変えてとか思ったけど、ジャンプスーツじゃちょっと暑すぎたかなぁ。
 でもでも、そのおかげかも、だもんね。
 ホント、いい子だったもん。
 ふにゅ。陸くんに言ったら、ちょっと怒っちゃうかにゃぁ。
 でも、スゴク楽しかったからぁ。
 
 
 
 あ、いい風だあ……。
 バンダナ外そ。
 あったかくなってきたもんね。
 いい匂いもするし。
 さっきの駅でずいぶん降りたんだ。
 うん、春だよね〜。
 
 
 
 来週からまた学校かぁ。
 三年生になるんだよねぇ……。
 少しは考えなきゃいけないのかなぁ。
 うう〜ん、でもにゃあ……。
 
 
 んん。
 街の光がきれい。
 ゴトンゴトンが気持ちよくって……。
 駅、あといくつだったっけ。
 ちょっとくらいならぁ……ダメダメ。
 もう、何回失敗したやら、じゃない!

 でも……。
 うう〜ん、ダメ。
 ライトが流れてて、向こうの山の端っこでチカチカチカ……。

 ……ちょっとくらい、ならぁ……。
 うにゅ……。
 ………。
 ………。
 
 
 
 
 ……ごえ〜。
 何か聞こえた気がしたけど。

 うう〜ん。まだぁ……。
 
 ほら、起きて。
 うう〜ん、まだ起きたくないにゃ……。
 
 起きなさい。困るよ。
 え?
 あ……。

 ああ! もう!

 え、えっと。
 もしかして、わたし、乗り越しだよね?
 うなずく車掌さん。
 指差された駅の名前……。ああ、またやっちゃったぁ……。
 
 
 
 どうしよ。
 ママはもう仕事に出ちゃってるだろうし。
 家までは4駅だけど、歩いてくのはちょっと無理だよね。
 いっつもは明るい駅前も、結構暗いし……。

 どうしよ。タクシー……、はゼンゼン無理。
 こんなちょっびのオサイフの中身じゃあ。

 どうしよう。

 ……陸くん。

 ああん、こんなことで迷惑かけたくないぃ〜。
 ちゃんと、「愛してるよ」から始めるつもりだったのに。
 でも……。仕方ない、にゃ。
 だって、こんな時にワガママ言えるの、やっぱり。

 あ!
 マズイ!!

 バッテリー!
 ああ、やっぱり!
 消えちゃってる、ディスプレイ。

 ま、マイッタにゃ。
 どうしよう……。公衆電話? ダメだ〜。陸くんの番号、覚えてない。
 カイちゃんの自宅なら……、34……、うう、ダメ。

 どうしよ。朝まで待ち?

 あう……。仕方ないかにゃあ……。開いてるお店とかあれば。
 確か、24時間オープンのマンガ喫茶が南口に。

 コンビニに売ってるでしょ、急速充電器。ホント、千波美は。

 そ、そうだにゃ。前にこんなことあった時、言われたんだった。
 
 
 
 
 えっと、どれだろ。
 これで、いいのかな? 型番、合ってるよね。
 電池も、いるのかぁ。うう、結構な出費ぃ。悲しいにゃ……。

 ええと……。
 え? 何かダメぇ?
 足りないんですが。
 え? あ! お札、間違ってた。ソウセキさんじゃ足りないよね……って、五千円札は、ニトベさまは?

 あ、そうだ!!
 ホテルで……。ああう、お姉様ぶるんじゃなかっ……ううん、それはしょうがないけど。
 どうしよ〜。
 あ、じゃ、ゴメン。お金、足りないみたいだからぁ。
 はあ。ちょっと恥ずかし。

 ……これ。俺払うよ。

 はにゃ?
 あ、えっと、この四角い顔は……隣のクラスのジンナイ、くん。
 どうして、こんなとこに。

 よ、ちなみ。何やってんだよ。
 あ。あ、いいよ〜。やめてやめて。買うのやめるから。
 金髪とソフモヒの男の子と三人。この街で、何回か見かけたことあったっけ。

 いいって。俺とお前の仲だろ。そんなカッコしてるから、見間違えちまったよ。
 うう〜ん、少し気分変えようと思って。似合ってる?
 寄ってくる男の子二人。耳打ちするジンナイくん。
 へえ、聞いてたのと大違いじゃん。カワイイ系じゃなかったの? ワイルドじゃん。
 う、うん。まあね〜。このベルト、カッコイイでしょ。
 あ、充電器ふくろに入れられちゃった。
 でさ、お前、こんなとこで何やってるわけ。相変わらずの逆ナン? そりゃ、もう無理だよな。
 ううん、実はちょっと乗り越し〜って感じ。

 もう。そんなに囲まれちゃうと、ちょっと……。
 あ、それで、充電器かぁ。
 ソフモヒの子、ちょっと甲高い笑い方。ううみゅ、あんまり好きな感じじゃないにゃ……。
 うん。そゆことなんだ。お金、学校で返すね。ありがと、ジンナイくん。

 イタ!

 腕が握られてる。
 どうせ、暇だろ? 遊んでこうぜ。ちなみ。
 耳にかかる息。
 ……Hしないか。
 んん、やっぱりぃ……。でも、あの時もいい感じじゃなかった、よね。それに、今はもっと……。
 ん、今日はもういいんだ。けっこ、楽しかったし。帰って寝たいし。
 うおっ! 一人で寝ちゃうって? もったいないって。
 こ、こら。寝る時は一人でしょぉ。
 あう……。背中がゾクゾクってした。イヤな感じ。3人の笑い合うのが……。
 ご、ゴメンね〜。帰るから。
 う、でも、手が離れない……。
 もう、いいっしょ。こいつから聞いてるぜ。何でもオッケーのちなみちゃんなんだろ?
 
 
 ああう……。どうしよ。こんなの、イヤだなぁ。でも、逃げようがないし。
 囲まれて、ズルズル、ズルズル。暗い裏の通りの方に行ってる。
 あ、ラブホ街だ。知ってるけど……。

 ね、ね〜。やめとこ。わたし、エッチは大好きだけど、こういうのは、ね。
 笑い声。
 エッチが大好き〜! だって。燃えるぅ!
 こ、こら。そういうことじゃなくってぇ。
 もう、いいじゃんか、ちなみ。こいつらうざいなら、俺だけでもオッケーだって。
 おいおい、そりゃないだろ。
 そうだっての! お前だろが、楽しめるぜぇってたの。
 もう、だから、違うぅ。

 ゴメンね、ジンナイくん。やっぱりわたし、帰りたいし。
 イケてないこと言うなよ、ちなみ。
 か、囲まないで。うう……。
 イヤだ……。
 髪の毛の匂いと、ツンとするフレグランス。

 なら、ここでどうよ。誰もいないしさ。
 建物の間に見えてきた、暗い公園。
 うう、ヤダよ。こんなの、楽しくないよ。
 イヤだよぉ。


 ……な、何だよ。
 驚いた感じの声。
 囲みが解けて、後ろを振り返るジンナイくん。

 おい、お前ら、怪しいんじゃないか?

 え?
 
 え?
 あるはずがない声。
 だけど、どうして?

 本郷!
 お、陣内か。お前、人の彼女をどうするつもりだよ。

 り、陸くん!!

 嘘じゃないよね。
 うん、嘘じゃない。陸くんだ!
 誰よりおっきな身体に、太い腕。短い髪に、キリッとした眉の下で、とっても優しい目。

 いや、悪気はなかったんだよ。ちなみ、さんが一人でいたからさ。な、お前だってわかるだろ?

 何が? どうわかるって?

 ――あ!
 なんだ、こいつ!!

 り、陸くん!

 わたしの方を見て、にっこり笑った陸くん。
 後ろから思いっきりゲンコで叩かれたのに……。

 ん、今何かしたか?

 な、なんだ、コイツ……。

 やるのか、陣内。
 い、いや。そんなんじゃない。わ、悪かったな。
 ゲンコで叩いたソフモヒの一人と、もう一人に何かを耳打ちして……あ、今のうちにおっきな背中に隠れちゃおう!

 お前も、しっかり彼女の管理くらいはしとけよ。
 ああ、そうだな。そうするよ。

 行っちゃう……。
 ああ、良かった。
 ホッ……。

 まったく、お前はなぁ。ちょっとは気をつけろよ。おい、だから……。

 ギュウゥゥ。
 アン、陸くん、陸くぅぅん!
 良かったぁ。好き好きぃ!!

 ふぅ、ちなは。ホントに参っちゃうよ。

 ね、どうして、どうして?
 あ? 今日で一段落だろ、部の方。携帯繋がんなくて、ちなの家にかけたら、帰ってないっていうじゃないか、潤がさ。
 それで?
 電車には乗ったらしいし、時間を考えりゃココ止まりの急行だろうと思ってさ、バイクで一っ走り。また、乗り越しだろ?
 う、うん。そうだけど。
 まずコンビニに寄るだろと思って聞いて見りゃ、なんだか怪しい奴等に囲まれて裏通りの方へ行ったって言うじゃんか。まったく、焦らすなって。
 ご、ごめん〜。

 あ、でも、陸くん、笑った。ゼンゼン怒ってない。
 アタマの上に乗せられるおっきな手。
 あん。ゴメンにゃ、陸くん。

 だいじょぶ? 痛くなかった?
 あ、ああ。あんなパンチ、新入生のタックルほどもないよ。ラグビー部をなめるなって。
 は、はにゃ……。陸くん、やっぱり強〜い!
 でも、よかったよ。陣内でさ。アイツ、そうヤバイことができる奴じゃないからな。
 と、肩が抱かれて、引き寄せられちゃって。
 うん、陸くんだ……。
 おっきいんだ。あったかいんだ。かっこいいんだ。
 
 
 
 
 
 陸くんのベッド。
 ブルーのシーツはいつも通りで。
 おっきな身体に合わせてキングサイズなんだよね。
 部屋にいっぱいのラグビー用具。
 横縞のユニの写真がカッコいいノダ。って、わたしが撮ったんだよねぇ。
 へへへ。

 シャワー、気持ちよかったんだにゃ。
 陸くん、もうハ・ダ・カ。
 もちもち、わたしも。

 ホントにかわいい子だったんだよ。
 ふう〜ん。そっか。
 女の子みたいで。スカートなんて、わたしより似合ってたかも。
 ちなよりもか? そりゃえらいことだ。
 へへへ。
 でもな、ちな。
 なあにぃ?
 そういうこと、言わないんだぞ。これからって時にさ。
 あ。

 ごめ〜ん、陸くん。
 チュ!
 チュゥゥ!

 うにゅ。舌が吸い込まれちゃう。
 あ、ジンってしたぁ。
 ギュッって肩が抱かれると、すごく、すご〜く、嬉しくて。

 陸くん、好きだよ。
 好きだよ。誰よりも。

 でも……。
 ほとんど思ったこと、ないんだけど。
 いいのかにゃ、聞いても。

 ね、陸くん。
 うん?
 ねえ、ねえ……。
 どした? ちな? この間の電話のことか?
 う、うん。
 (そ、そうだ。あのこともゴメンしてないんだったぁ。うぅ、ダメダメなわたしぃ。ポカポカ!)

 ね、ねえ、陸くん。どーしてわたしでダイジョブなの?
 ん……。どういう意味だよ?
 腕まくらで面白そうに笑う陸くん。もう、わかってるはずなのに。
 だからぁ……。

 チュ。
 あ、うんと優しいキス。
 うにゃ。嬉しいんだぁ〜。

 ちな。
 うん。
 ちな、楽しいのが好きだろ?
 うん。
 それでいいんだ。そういう千波美が好きだからさ、俺。これからずっと、面倒みていいだろ? 迷惑か?

 は、はにゃにゃ……。
 えっと、えっと。
 何言っていいのかわかんないよ。
 うう、だって、陸くん、わたしってぇ。

 ああん、ダメだにゃ。そんなに思いっきりチュ、されちゃったら。
 ギュッて抱き締められて……。
 ああん、好き。好きぃ。
 
 
 あ、そんなに胸揉まれちゃったら、形変わっちゃう。
 でも、気持ちいい。
 いっぱい愛して。うん、チュッって吸って。
 噛んでもいいよ。
 うん、そう。

 舌のざらざらが、ドンドン下に……。
 おへそを伝って、もっと。
 あ、にゃん。

 ああん……。
 声が出ちゃう。
 どうして、だろ。恥ずかしいよ。
 ……ちな。
 うん、手握ってて。
 それで、いっぱい舐めて。吸って。

 ああ、ダメ、だにゃ……。
 足持ち上げれられて、クリちゃんに熱い息がかかって、すぐに奥までざらざらが入ってきて、
 あ、ああん……。

 声、出ちゃうよ。
 ダメ。恥ずかしい。
 でも……。

 好き? 陸くん、わたしのこと、好き?
 あ、陸くんのおっきいのが、中に……あ、ああん。
 好きだよ、ちな。好きだ。

 あ……、何だろ。身体中が痺れたみたい。
 好き……うん。大好き。
 言っていいよね、ね。

 りく、陸。
 愛してるの。誰より。愛してるの、陸ぅ。
 俺もだ、千波美!

 ああ、スゴイ。
 わたしの中で暴れてる陸の。
 アタマが真っ白になっちゃう。
 持ち上げられて、ああ、だめ。そんなに奥まで突かれちゃったら、イッちゃうよ。
 ダメ。
 ダメ。
 陸がまだだから。

 はあ、はあ……。陸、来て。来てぇ。
 あ、ああ、千波美。いくぞ。

 ああ、もう、おっかけられない。
 カラダの全部が陸の色になっちゃう。
 耳に息があっついよ。
 いっぱい出入りしてる。
 あ、ダメ。
 カラダがそのままで突っ張っちゃって……。
 か、感じちゃう。
 来て。
 
 来て。中に、来てぇ。
 千波美!

 ああん! 陸ぅぅ……。
 うぅ、千波美!!

 あ、あああ。
 いっぱい、流れ込んでくる。
 ああ……。
 ビクッてしてる。
 あ、また、ジン……。
 
 
 
 はあ……。
 うん……。
 あったかい。いっぱい、気持ちよかった……。
 陸くん、すごい汗。
 頑張ったね。

 陸くん。
 うん?
 もう一回言っていい?
 何を?

 (ああん、ちょっと恥ずかしいにゃ)
 愛してるよ。陸。

 チュ!

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